Scene.8 素敵な本によろしくと。
高円寺文庫センター物語⑧
「お世話になっています。大栄出版です!」
「こちらこそ、先日のカラオケは最高だったね」
「大展開をしていただいている『THE KINKS』の新刊の件でお邪魔しました。
店長、この売り上げデータを見て下さい! 全国の総合で、文庫センターさんがダントツの1位なんですよ。主要大手書店をぶっちぎっています!」
社名を変えて違うジャンルに行ってしまったが、この時期の大栄出版はROCKでノリにのっていた。
『カルト・バイオグラフィー・ラインナップ』と銘打った、ROCKシリーズの第1弾は『TOM WAITS』でビックリした! ボクら的に大喜びでも、営業的に大丈夫なのかって心配したけど、単色にミュージシャン名をドンと持ってきたジャケット=装丁は、カッコいい!
しかも本文のすべてが横書きというのも、ROCK本らしくて魅せられてしまった。
第2弾『LOU REED』第3弾『JANIS JOPLIN 』には、畏れ入りました。
この後も『THE BAND』『VAN MORRISON』『NEIL YOUNG』などときたら、高円寺ロックキッズは痺れまくり!
KINKS 以前にも、いくつかが売上NO.1を取ったはず。ただメジャーなミュージシャンやバンドなのに、カルトはなぁって・・・・ま、いいか。
こんな版元さん達とは、楽しくカラオケで洋楽ナイト! バイトくんたちも繰り出して、Let`s 過ごそうぜ Night Together♪
気がつけば営業部長は寝ているし、終電もない!
わが長男に自宅の江戸川からクルマで来てもらい、大栄出版のお二人を横浜は関内駅までお送りした。
90度以上の最敬礼をする彼らにバイバイしながら、長男に「サラリーマンの挨拶を、しっかり見たか?!」
「こんにちは」
「わお! どうも、岡田さん」
「あれ『パチンコフェア』に、パチンコ台を置いているのって目立つね」
「でしょ。白夜書房まで取りに行って、借りてきたんですよ。」
リスペクトしてやまない版元のひとつが、ワイズ出版。
ボクが映画好きと言うのもあるけど、決してメジャーではない映画関連の本を一点一点慈しむように出版されているのを感じずにはいられない。
社長の岡田さんは、ボクが本屋の魂を学ばせていただいた弘栄堂書店のご出身。弘栄堂書店労働組合は、書泉争議の最前線に多くの方々が度々駆けつけてくれていた。そんな弘栄堂書店労組の隊列の中に、岡田さんがいらしたことも忘れない。
それに、語り継がれてもいないんじゃないかなぁ・・・・この国でブックフェアというスタイルを行ったのは、吉祥寺弘栄堂書店が初めてなんだぜ!
「シュールレアリスム・ブックフェア」の傍らには、フェアを彩る手作りの小冊子が置かれていた。
ひとり社長の、ワイズ出版と組んでの仕事は楽しかった。
出版物では『つげ義春ワールド ゲンセンカン主人』『つげ義春 漫画術 上・下』『石井輝男映画魂』。『名美 Returns』からは、九葉のポストカードを封入した「名美 ポストカード・セット」を販売して、地道に売れ続けた!
そして「つげ忠男Tシャツ」が、やっぱり高円寺ならではと売れ続けているのも嬉しかった!
「あ、岡田さん。つぎの書店労協総会と勉強会のレジュメなんですけど、お時間ある時にご覧になっといてください。」
「お!『阪神淡路大震災と書店労働組合』がテーマね。
『解放出版は進撃する』『京阪神エルマガ、関西から関東の出版を撃つ』『小汀、吼える!』『本か映画かワイズ出版だ』あはは、面白いねぇ。
本郷の旅館での総会は無理かもだけど、三田の勤労福祉会館の勉強会には行かないとね」